スクリーンの選び方

プロジェクタースクリーンはその種類を考える時に、光学的特性・機構などの面から、その多様さに驚くことでしょう。

その特性を知ることにより、目的にあったスクリーンを選ぶことができます。
スクリーンの後ろにプロジェクターを置いて投写させるリアタイプ(透過型)と、スクリーン前面から投写するフロントタイプ(フロント投写型)に大きく分けられます。
ここでは、ホームシアターで多く利用されるフロントタイプスクリーンについてご説明いたします。

スクリーン反射面の性質で分ける

映画館などを含め、多くの場合にフロント投写型のスクリーンが選ばれます。
フロントタイプのスクリーンは、プロジェクターから受けた光を、鑑賞する者のところに反射して映像を映し出します。

我々の身近にあるものでスクリーンを考えてみます。表面に艶があるものや、鏡・光沢のある金属板等はスクリーンとして機能しません。映像が映らずにプロジェクターのレンズが眩しく見えるだけです。

一方、画用紙や白い布、白っぽい壁、ホワイトボードなどは、無意識のうちにスクリーンの代用品として使用することがあります。私たちに白く見えるものは光を多く反射しており、スクリーンとしての特性を満たしていることになります。

スクリーンの光学的特性は、大きく次の4つに分けることが出来ます。

1.広階調型(HDR)
広階調型(HDR)
HDR対応プロジェクター専用スクリーン。
2.拡散型(ホワイト)
拡散型(ホワイト)
完全拡散に近い反射をします。
3.回帰型(ビーズ)
回帰型(ビーズ)
入射と同一方向に反射します。
4.反射型(パール・シルバー)
反射型(パール・シルバー)
入射方向に対し正反対に反射します。

1.広階調型(HDR)

HDR対応プロジェクター専用スクリーン。高ゲインでありながら、ホットスポットを抑えた幕面です。明るさを伸ばしながら黒浮きも抑えた階調の広さが特徴です。しかも視野角をできるだけ広くとれるよう、拡散型・回帰型・反射型のそれぞれの特性を兼ね備えた第4のスクリーンです。

HF102 レイロドール

HDRスクリーン
HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)対応プロジェクターの登場により、要望が高まった高ゲインスクリーンとして開発されたレイロドールスクリーン。投写される光を生かすゲインの高さと共に、黒の諧調もしっかり表現可能な広階調スクリーンです。表面素材に特殊加工を施し、高ゲインと視野角を実現させています。

2.拡散型(ホワイト)

ホワイト(WG)

入射光に対し全方向に拡散するので視野角が広く、部屋のどこからでも同一の映像を見る事ができる、最も使用されているスクリーンです。
ただし、有害光(※2)も同様に拡散するため、暗い部屋、プロジェクターの光出力に余裕がある事が要求されます。階調表現がナチュラルなので、映像表現が主体のコンテンツなどに特にお勧めします。

ピュアマット シリーズ

ピュアマットは、表と裏で織り方の異なるポリエステルの二重組織を同時に織り上げています。表面はランダムな編み方で、これがプロジェクターの規則正しい画素の干渉を防ぎ、モアレ(干渉縞)に強くナチュラルな映像再現を可能にしています。

WF302 ピュアマットⅢ Cinema

4K・8K時代のスクリーン「ピュアマットⅢ」が電動巻き取り可能へ進化
4K・8Kの高精細時代にふさわしい映写スクリーンとして誕生した「ピュアマットⅢ」は、4Kプロジェクターとの素晴らしいマッチングが高評価を受け、大変多くのホームシアターファンの支持を頂いております。
しかし、非常にデリケートな幕面であるため、張込スクリーンのみのご提供に限られていました。 そんな「ピュアマットⅢ」を進化させ、電動巻き取りを可能にしたものが「ピュアマットⅢ Cinema」です。

4K映像の「ディティールのフォーカス感を上げ、よりリアリティのある映像にする」ために、極細の糸で織り上げた微細な特殊二重織物である「ピュアマットⅢ」の基本構造は全く変えずに、巻き取りに耐えられる生地の強化を図りました。
「ピュアマットⅢ Cinema」は映像をムラなく均一に拡散し、奥行きのあるフォーカス感を実現し、ピュアマットシリーズのコンセプト「なにも足さない、なにも引かない映像再現」という、プロジェクターの個性をそのまま映し出す、癖の無い優れた特性をそのままに、拡散型ホワイトマットの理想値であるゲイン1.0も維持しています。
「ピュアマットⅢ Cinema」は、映画ファンに贈るホームシアター用スクリーンの集大成です。

WF204 ピュアマット204

オーエス伝統のファブリックスクリーン
2000年に誕生したオーエスの“ピュアマット“は、不規則な織目・織り方の異なる2種の生地を、同時に編み込むという特殊な技術で、初代のピュアマット101から始まり、プロジェクターの進化と共に改良を重ねてまいりました。
ピュアマット204は、これからホームシアターにフルHDプロジェクターの導入をお考えの方のために、改めて再開発したフルHD対応ピュアマットスクリーンです。

 

サイドテンションスクリーン専用

WV102 サイドテンションスクリーン専用

超短焦点(短焦点)プロジェクターに投影するためには、均一な平面性が求められます。 WV102はホワイトスクリーンの優れた特性を維持しながら、サイドテンションの効果を活かし、スクリーン面の平面性を生み出します。

  • 5°ゲイン0.9±10%
  • ハーフゲイン角60°以上
  • 防炎品

 

音響透過型(サウンドスクリーン)

サウンドスクリーンは、映画館で採用されているスクリーンです。スクリーンの背面にスピーカーを置き、幕面を透過して音が出る事を前提に開発される製品で、まさしく映像から音が出るという、音の定位感に優れた音響透過型スクリーンです。


THX認定

「THX」は、ルーカスフィルム社が提唱した、シアターに関する世界的な品質基準です。
映画制作者の意図した映像や音声を忠実に再現する事を目的とした認定プログラムを提供しています。
映画館のTHX認定は、高品位な映画館を見極める上で、重要な指標として広く認知されています。
「ホームTHX」は、DVDプレーヤー、AVアンプ、スピーカー、スクリーンなどの機材を認定します。
スクリーン製品の認定に際しては、音響透過型であることが前提条件となっており、さらに認定テストでは、画質、音響透過特性など、厳格な測定および審査に合格する必要があります。


サウンドマット

拡散型の均一な画面と、高音域も優れた音響透過特性を両立
「サウンドマット」は、特殊繊維をニッティングと言う織り方で、非常に細かく編み上げた編み目の間から音を透過させるタイプのサウンドスクリーンです。そのため穴あけタイプのサウンドスクリーンに比べ、高音域にも優れた音響透過特性を持ちます。
また映像表現に関しても、通常は音の透過する網目からは光がすり抜け、スクリーン後部の壁やスピーカーからの反射光が再びスクリーンに回帰し、輝度ムラを生じる原因になりますが、特殊なバックコーティングを施す事により、光の回帰を遮断し映像面への影響を低減させています。
映像側の幕面は特殊な表面コーティングにより、視聴者の位置に係わらず均一で自然な映像再現をする拡散型の特性を持たせています。

WS102 サウンドマット
  • 5°ゲイン0.7±5%
  • ハーフゲイン角60°以上

 

WS103 サウンドマット(130型以上の大型用)
  • 5°ゲイン0.7±5%
  • ハーフゲイン角60°以上

 

WS102、WS103の音響透過特性

3.回帰型(ビーズ)

道路標識の光学的特性がこのタイプのスクリーンです。光が投写された方向に反射光を戻します。自分の車のヘッドライトで、ドライバーが標識を見やすいのはそのためです。道路標識と同じように光を戻す性質(回帰性)を作ったスクリーンです。光が収束されるため、スクリーンゲイン(※1)は1.5〜3と明るくなります。
プロジェクターの近辺で映像を鑑賞することが、このスクリーンの性能を生かした使い方になります。しかしプロジェクター光軸から左右に20〜30°の角度を越えてからは、拡散型よりも暗くなることに注意してください。
製造工程で、ミクロン単位の細かなビーズを使用することからこの名があります。このスクリーンのもう一つの利点として、迷光(※2)も同様に、光の来た方向に帰すため、映像に対する視聴者への影響が少なくなることです。

BU201 ウルトラビーズ・プレミアムホワイト ※生産調整中

リビングシアター・3Dに最適なスクリーン
回帰型スクリーンに当たった光は来た方向に跳ね返る性質を持ちます。そのため、プロジェクターの近くで視聴する狭い部屋などには、その特長を発揮します。また有害光に対し、異なる方向にプロジェクターの光源を置く事によって、有害光の影響を少なくすることが可能になります。

  • 5°ゲイン2.7±10%
  • ハーフゲイン角17°±5%
  • 防炎品

 

4.反射型(パール・シルバー)

曇った鏡をスクリーンに見立てれば、このタイプになります。鏡に光が反射するのと同様に投写された光の方向と逆側に反射するので反射型と言います。パールと言われるのは、幕面に印刷されるパール顔料の名前から取られました。プロジェクターと鑑賞者が入射角側と反射角側の関係にある場合には、このスクリーンの選択が有効となります。しかし平面性の維持の難しさや、プロジェクターの性能の向上により、近年はほとんど選ばれるシーンがなくなってきました。

その他のスクリーン

シルバースクリーン SD

反射型の範疇に入るスクリーンですが、スクリーンゲイン(最下段※1)が3以上と大きなゲインを持ち、視野角が極端に狭いため、現在は主に3D用のスクリーンとして利用されます。3D映像の右目用、左目用の2台のプロジェクターの偏光状態を維持するのに適したスクリーンです。

ハイゲインスクリーン SA

反射型のスクリーンです。アルミ表面に特殊ラミネートをかけた、板張りのスクリーンです。輝度の低いポケットプロジェクターの映像でもしっかりと表現します。

スクリーンを展開する機構で分ける

上巻きタイプ

小型スクリーンの代名詞的な存在です。
天井や壁上部に本体を固定し、使用するときに引き下げて使うタイプです。
選択のポイントはスクリーンの引き下げがスムーズで、停止が確実なものを選びましょう。
収納時のショックを和らげる機構などもあります。スクリーン面は上部両端からV字の皺が生じないもの、長い間の使用に対しても皺や弛みが生じないものを選びましょう。電動タイプの選択もあります。

下巻きタイプ

3脚スタンド式、スクリーンケース床置きタイプなどがあります。
選択のポイントとして設置の安定性が重要です。使用時にスタンド部分が邪魔にならないかを判断の基準にしましょう。また、スクリーン上部両端からV字、中央部からハの字の皺が発生しないものを選びましょう。

張込みタイプ

スクリーンシートの周囲を紐やスプリングで外周枠に引っ張って平面を形成した機構です。可搬性や収納性は劣りますが、常に平面を維持できます。特に反射タイプの平面性維持とスクリーンを傾けることで、その性能を最大限に引き出します。この張り込みタイプの平面性は各種スクリーンに応用でき、リファレンス・スクリーンとして勧められます。

スクリーンの機構について

<ロータリーダンパー機構>

手動にてスクリーンの昇降操作を行うタイプです。オーエス独自開発による、スプリング巻上機構採用によって、ロータリーダンパーの特徴である静音性を更に高めました。

<ボールストップ&ソフトワインド機構>

オーエススクリーンの上巻きスプリングローラータイプには、小型から大型までボールストップとソフトワインド装置が標準装備されています(一部製品を除く)

ボールストップ機構

軽く引下げるだけですぐにロックがけられ解除もスムーズです。ただし、目一杯引下げてしまうと、ロックが解除できない場合がありますので、ストップシール以上には生地を引き下げないでください。
ソフトワインド機構

電動式スクリーンのようにゆっくり巻上がり、静かに収納。衝撃による損傷の心配がありません。

プロジェクターからの選択

最近の液晶プロジェクター、DLPプロジェクターなどは、光量が豊かで十分な明るさを持っています。よほど明るい環境で文字や図形の認識を必要とする以外は、ゲインの高いスクリーンを必要としなくなったと考えてよいでしょう。
3管式プロジェクターの表現能力を最大限生かすためには素直な反射特性が重要と考えます。そのためには遮光や二次反射を押さえたカーテン、壁、調度の専用ルームでの映写が必要でしょう。スクリーンゲインが低くても、視野角の広いホワイトマットが有効な選択でしょう。
ビーズ、パール、シルバー系のスクリーンにおいては、カラーシフトの発生や周辺光量が落ちやすい(PJの焦点距離が短い場合には顕著に出やすい)ので注意しましょう。これらの問題の発生はスクリーンのゲインと相反し、より低いゲインのスクリーン選択は問題の解決につながります。

最後に

『スクリーンの賢い選び方』のまとめとして、最近のプロジェクターの大光量化、短焦点化を考えると、各タイプのゲインの低いものを考えるか、ホワイトマットを選択することがよいでしょう。
映像の明るさが必要な場合にプロジェクターの光量を増すことは、予算的にも大変なことです。しかし、スクリーンサイズを一回り小さいもの(100インチを80インチサイズ)を選択すれば、明るさは2倍近く確保されます。明るさは面積に反比例して映像を大きく映すことで減少します。画面サイズと明るさのバランスを確認して利用環境下での映像効果の高いものを選択しましょう。
良い映像を得るためには設置後の映写環境のチューニングが一番重要であり、スクリーンの特性を生かすも殺すも映写環境作りです。使われるスクリーンの特性を理解し、そのスクリーンを生かす環境を設定することで素晴らしい映像をお楽しみください。


※ レイロドール、ピュアマット、ウルトラビーズは、株式会社オーエスの登録商標です。

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